コラム

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犬・猫・エキゾチックアニマルのがん治療 ~電気化学療法(ECT)とは?~

2026.08.09

「高齢だから麻酔が心配。」

「できれば大きな手術は避けたい。」

「がんといわれたけれど、できるだけ普段通りの生活を続けさせてあげたい。」

動物のがん治療を行っていると、このようなご相談をいただくことが少なくありません。

がん治療の世界では、昔から

・外科治療(手術) 

・化学療法(抗がん剤治療) 

・放射線治療 

の3つが治療の柱とされてきました。

そして現在、これらに続く「第4の治療選択肢」として注目されているのが、

です。

ただし、ここでひとつ大切なことがあります。

それは、

がん治療の原則は外科手術である

ということです。

腫瘍は、取り切ることができるのであれば、外科的に切除することが最も根治を期待できる方法です。

そのため、

「取れるものは取る」

という考え方は、今も昔も変わらないがん治療の基本です。

むしろ、

・高齢や持病のため大きな手術が難しい 

・腫瘍が鼻先や口の中など、十分な切除が難しい場所にある 

・手術後の病理検査で取り残しの可能性が指摘された 

・再発してしまった 

・放射線治療を受けることが難しい 

といった場面で力を発揮する、

と考えるのが適切かもしれません。

簡単に言うと、

です。

腫瘍に抗がん剤を投与したあと、専用の機器を使って短時間の電気パルスを流します。

すると腫瘍細胞の膜に一時的に小さな穴が開き、通常では細胞の中に入りにくい抗がん剤が、一気に細胞内へ取り込まれるようになります。

この現象を、

と呼びます。 

細胞膜は数分以内に元に戻りますが、その短い時間の間に大量の抗がん剤が細胞内へ入り込み、腫瘍細胞を効率よく破壊します。

イメージとしては、

と言えるかもしれません。

電気化学療法で最もよく使用される薬剤は「ブレオマイシン」です。

この薬は非常に強い抗腫瘍作用を持つ一方で、細胞の中へ入りにくいという特徴があります。

しかし、電気穿孔を行うことで、

ことが報告されています。 

つまり、

「抗がん剤をたくさん使う」

のではなく、

という発想の治療なのです。

(1)全身への負担が比較的少ない

一般的な抗がん剤治療では、

食欲不振 

嘔吐 

下痢 

白血球減少 

などの副作用が問題となることがあります。

一方、電気化学療法は腫瘍局所へ効果を集中させるため、

(2)手術が難しい場所でも治療できる可能性がある

例えば、

鼻先 

まぶた 

唇 

口の中 

指先 

などは、

完全切除を目指すと見た目や機能に大きな影響が出ることがあります。

(3)高齢動物でも適応できる場合がある

もちろん全身麻酔は必要になりますが、

そのため、

「高齢や持病などの理由で手術は難しい」

と言われた子でも検討できる場合があります。

(4)生活の質(QOL)の改善が期待できる

腫瘍が大きくなると、

出血する 

においが出る 

食べにくい 

痛みがある 

など、生活の質を大きく低下させることがあります。

電気化学療法によって腫瘍を小さくすることで、

「出血が減った」

「食べられるようになった」

「穏やかに過ごせる時間が増えた」

もちろん、万能な治療ではありません。

全身のがんを治す治療ではない

肺転移やリンパ節転移など、全身へ広がった腫瘍そのものを治療することはできません。

そのため、場合によっては手術や抗がん剤治療などを組み合わせて治療を行います。

麻酔が必要

電気刺激によって筋肉が収縮するため、通常は全身麻酔または深い鎮静下で行います。

治療後に腫れやかさぶたができることがある

治療後には、

腫れ 

赤み 

痛み 

潰瘍 

かさぶた 

などがみられることがあります。

多くは一時的な反応ですが、腫瘍の大きさや部位によっては見た目の変化が大きくなる場合もあります。

現在、比較的良好な治療成績が報告されているものとして、

肥満細胞腫 

扁平上皮癌 

軟部組織肉腫 

悪性黒色腫 

口腔内腫瘍 

鼻腔内腫瘍 

注射部位肉腫 

などがあります。 

また、

手術後に切除しきれなかった腫瘍 

再発した腫瘍 

放射線治療が難しい症例 

当院は犬・猫だけではなく、ウサギ・フェレット・ハムスター・モルモット・チンチラ・デグー・ハリネズミ・鳥類・爬虫類などにも応用を検討しています。

海外では多くの研究報告があり、特に局所腫瘍に対して良好な成績が報告されています。

犬の肥満細胞腫では、完全寛解率が62〜80%とされ、術後補助療法として使用した場合には

現在最も期待されている適応疾患のひとつとなっています。 

Q:抗がん剤治療ですか?

抗がん剤を使用しますが、一般的な全身化学療法とは考え方が異なります。

Q:副作用はありますか?

電気化学療法では抗がん剤を使用しますが、一般的な抗がん剤治療のような

・ 強い食欲不振 

・ 嘔吐 

・ 下痢 

・ 全身の脱毛 

一方で、治療した部位には、

・ 腫れ 

・ 赤み 

・ 痛み 

・ かさぶた 

・ 一時的な潰瘍形成 

などがみられることがあります。

これらは多くの場合、治療によって腫瘍細胞が壊れていく過程で生じる一時的な反応であり、時間の経過とともに改善していきます。

Q:何回くらい治療しますか?

腫瘍の種類や大きさによって異なります。

1回で十分な効果が得られる場合もあれば、数回繰り返し治療を行う場合もあります。

一方で、

・ 出血を減らす 

・ 食べやすくする 

・ 痛みを減らす 

・ 臭いを軽減する 

といった緩和治療として行うこともあります。

多くの場合は日帰りまたは短期の入院で治療可能です。腫瘍の部位や全身状態によって異なります。

電気化学療法は、

外科手術でもない。

抗がん剤治療だけでもない。

放射線治療とも少し違う。

そんな、

です。

もちろん、腫瘍治療の基本が外科手術であることは今後も変わることはありません。

それでも、

「高齢や持病などの理由で手術は難しい。」

「場所が悪くて取り切れない。」

「もうできることはないかもしれない。」

治療の目的は、腫瘍をなくすことだけではありません。

その子らしく食べ、その子らしく歩き、その子らしく過ごせる時間を少しでも長く守ること。

電気化学療法は、その子にとって最適な治療を選択するための、大切な選択肢のひとつになるかもしれません。

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今井 勇太郎

WRITER 
今井 勇太郎 JAHA認定総合臨床医

ヒイラギ動物病院 院長・獣医師

2025年4月に神戸市中央区でヒイラギ動物病院を開院。犬・猫はもちろん、ウサギやハムスター、フェレット、小鳥、爬虫類などのエキゾチックアニマルまで幅広く診療しています。

「大切な家族に、安心して相談できる動物病院でありたい」という思いのもと、一頭一頭に寄り添った丁寧な診療を心がけています。JAHA認定総合臨床医として総合診療を軸に、眼科・消化器・皮膚科・エキゾチックアニマル診療にも力を入れ、分かりやすい説明と納得いただける医療の提供に努めています。

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